最近、どこの会社もAI導入で業務効率化を目指しています。でも、ちょっとそもそもの効率化という発想が間違っているかもしれません。
思い出してみてください。インターネットが出てきたとき、「メールは便利なツールだよ」「ウェブで情報収集が楽になるね」って言って満足していた人たちはどうなりましたか?結局、取り残されました。一方で、早くから「インターネットを生活の中心に据えよう」とコミットした人たちは、世界を変えました。
AIはそれをさらにスケールアップしたものなのです。AIを「業務効率化のツール」として見ている限り、本当の価値は見えてきません。AIは道具じゃなくて、新しい世界観そのものなのです。
コーレはこれまでたくさんのAI導入プロジェクトを見てきました。その中ではっきり分かったことがあります。「業務時間を何時間削減」みたいな目標を掲げているプロジェクトは、ほとんど失敗します。なぜか?それは、AIの本質を理解していないからです。
なぜ効率化をゴールにすると失敗するのか

効率化思考の限界
会社がAI導入を始めるとき、だいたいこのような流れになります。「AIで業務を効率化したい」「業務時間を30%削減しよう」みたいな目標を立てます。でも、これは20年前に「エクセルで業務を効率化しよう」と言っているような感覚です。
AIの進化速度は人間の想像を超えています。今日「これが限界」と思っていたことが、明日には当たり前になる。そんな世界で「効率化」という小さな目標を追いかけていたら、あっという間に時代遅れになります。
本当の問題は視点の低さ
実際にプロジェクトを始めると、すぐに壁にぶつかります。「どの業務からAIを入れるか」を決めようとして、業務の棚卸しを始める。そして気づきます。業務が非効率な理由は、実はAIとか関係ない。社員のパソコンスキルが低いとか、データがバラバラとか、そういう基本的な問題ばかりに突き当たります。
でも、ここで立ち止まって考えてみる必要があります。そもそも「今ある業務を効率化する」という発想自体が筋が違うのです。AIと一緒に「新しい価値を生み出す」「今までできなかったことをする」という視点がないから、つまらない問題で足踏みするのです。
経営層の焦りが生む落とし穴
経営層が「競合他社はAIで成果を出している」というニュースを聞くと、「うちもAIで効率化しよう」とプレッシャーをか全体にかけることになります。しかし、ここでも根本的な勘違いがあります。
他社の成功事例は、たいてい「○○時間削減」「○○%効率化」といった話です。しかし、それを真似しておいかけようとするのは落とし穴です。なぜなら、本当に成功している会社は、効率化など通過点に過ぎないことを知っているからです。彼らの本当の狙いは、AIを使って全く新しいビジネスモデルを作ることなのです。
コンサルタントを呼んでも同じです。コンサルタントに「失敗しない」ことを期待する場合、小さくて安全な業務改善ばかり提案されることになります。AIというまだ進化中の技術を活用する中で、失敗しないことを期待されると、失敗しない提案をするしかないのです。そしてその提案は大抵の場合はしょぼいです。
成功する会社は世界観を変えている

導入数を追う
AI導入を成功させている企業には共通点があることがあります。それは「業務効率化」ではなく「AI導入数」を目標にしていることです。しかし、これは単に「たくさん試せばいい」という話ではありません。
導入数を追うということは、組織のあらゆる場所にAIを浸透させるということです。AIの思考プロセスを自分たちの事業に溶け込ませるということです。10個やれば1個当たるという確率論ではなく、10個やることで組織全体がAIネイティブになっていくプロセスなのです。
失敗は新しい世界への入場料
導入数を追いかけると、当然失敗も増えます。しかし、その失敗こそが資産になります。なぜなら、AIと一緒に何ができるか、何ができないかを、経験値として理解できるからです。
これは、インターネット黎明期にウェブサイトを作りまくった会社と似ています。最初はダサいサイトばかりでしたが、試行錯誤を続けた会社が、今のデジタル世界を支配しています。
AI導入の失敗を重ねることで、組織は「AIと共に考える力」を身につけます。これは本を読んでも、セミナーを受けても得られない、実践でしか手に入らない能力です。
AIとの共創パターンを見つける
AI導入を何度もやっていると、単なる効率化を超えた「共創パターン」が見えてきます。
例えば、社内データをAIに処理させるとき、最初は「要約してもらう」「検索してもらう」程度の発想しかありません。しかし経験を積むと「AIに新しい視点を提供してもらう」「人間が気づかない相関を発見してもらう」という使い方ができるようになります。
外部情報を扱うときも同じです。最初は「情報を集める」だけだったのが、「AIの視点で情報を再構築して、新しい価値を生み出す」ようになる。これが、AIと共に新しい世界を作るということです。
最初は違和感しかありません。AIの出力を見ても「これで合っているのか」と不安になります。しかし使い続けていると、AIの思考パターンが分かってきて、「AIならこう考えるだろう」と予測できるようになってきます。さらに進むと、「AIと一緒ならこんなことができる」という発想が自然に湧いてきます。
これは単なるスキルアップではありません。世界の見方が変わるのです。今まで見えなかったものが見えるようになり、できなかったことができるようになるのです。
ニュースの成功事例は氷山の一角

見えている成果は表層的
「AIで業務時間90%削減」といったニュース、よく見ます。しかし、これは氷山の一角です。本当にAIで成果を出している会社は、そんな分かりやすい数字では語れない変革を起こしています。
例えば、AIを使って顧客の潜在ニーズを発見し、全く新しい商品を開発する。AIと一緒に市場を分析して、誰も気づいていないビジネスチャンスを見つける。こういう成果は「○○時間削減」という単純な数字では表せません。
非効率は変革のチャンス
確かに、多くの会社には非効率な業務がゴロゴロあります。しかし、それを「効率化すべき問題」と見るか「変革のチャンス」と見るかで、結果は全く違います。
非効率な業務があるということは、そこにAIを導入することで、単なる効率化を超えた革新が起こせる可能性があるということです。手作業でやっていた分析をAIに任せたら、人間は「その分析結果を使って何をするか」というアクティブなな仕事に集中できます。
人を雇うのではなく、新しいパートナーを迎える
「成功率が低いのに、なぜAI導入をするのか」と思う人もいるでしょう。しかし、これは新しい知的パートナーを組織に迎え入れるようなものです。
新卒を採用するとき、労働力を買っているだけではありません。新しい視点や可能性を組織に取り込んでいるはずです。AIも同じ。いや、それ以上です。AIは24時間働き、疲れを知らず、膨大な情報を瞬時に処理し、人間には思いつかない発想をしてくれます。
10個のAIプロジェクトのうち、9個が期待通りにいかなくても、1個が組織を根本から変える可能性があります。そして、その1個は、効率化という小さな話ではなく、ビジネスモデルそのものを変革するようなインパクトを持っています。
今すぐAI導入数をKPIにしよう

文化の変革には時間がかかる
AI技術の進化速度は、人間の理解を超えています。今日の最先端が、明日には時代遅れになる。この速度についていくには、常にAIと共に走り続けるしかありません。
様子見している会社と、今すぐ始める会社の差は、時間とともに指数関数的に広がります。1年後には追いつけない差になり、3年後には別の世界にいることになります。
技術は買えますが、文化は買えません。AIと共に価値を生み出す文化、失敗を恐れずに挑戦する文化、データと直感を融合させる文化。これらは時間をかけて育てるしかありません。
今始めれば、3年後にはAIネイティブな組織になれます。しかし3年後に始めたら、その時点で3年遅れです。そして、その3年の遅れは、もう取り戻せません。
新しいKPI:「導入数」が世界観をインストールする
どうやってこの新しい世界観を会社に根付かせるのでしょうか。そのための最も現実的でパワフルな方法が、KPIを「削減時間」から「AI導入数」へと切り替えることです。
「導入数」をKPIにすると、チームは「成功しそうなものだけを慎重に選ぶ」のではなく、「とにかく数多く試して、AIに触れる機会を増やす」という行動を取るようになります。一つ一つの試みが大成功する必要はありません。むしろ、小さな成功やたくさんの失敗を通して、社員一人ひとりが「AIならこう考えるのか」「こんなこともできるのか」と肌で感じること自体が、何よりのAI経験値資産になります。
失敗は、もはや「コスト」ではなく「学習データ」です。うまくいかなかった試みは、「なぜダメだったのか」を分析したレポートとして社内に蓄積します。この生々しいデータこそが、会社全体の「AI経験値資産」となり、次の挑戦の成功確率を上げてくれるのです。
「導入数」を追いかけることは、単なる数字目標ではありません。それは、AIという新しい世界観を、試行錯誤という実践を通して組織の隅々にまでインストールしていくための、最も効果的な訓練(ドリル)なのです。
実践が育てる「AI活用の勘どころ」
導入数を目標にして、次から次へといろんな業務でAIを試していくと、会社の中にAI活用の「型」や「パターン」の知識がたまってきます。仕事上の課題の多くは、いくつかの典型的なパターンに分けられることに気づくはずです。
- 社内知識活用パターン: 社内ルールやマニュアルなどをAIに覚えさせて、社員からの質問に自動で答える。
- 単純作業の自動化パターン: 請求書などをAI-OCRで読み取り、システムに自動で入力する。
- 外部情報の収集・分析パターン: ネットニュースやSNSからビジネスのヒントを見つけ出す。
- 予測・最適化パターン: 過去の売上データから、将来の需要を予測する。
経験値が上がってくると、現場の課題を聞いた瞬間に、「この問題はあのパターンでいけるな」と、解決策への道筋がパッと頭に浮かぶようになります。この「AI活用の勘どころ」が、組織に身についてくるのです。
導入スピードが上がり、良い循環が生まれる
このパターンを見抜く力が上がると、AI導入を企画してから実行するまでの時間が劇的に短くなります。過去のプロジェクトで得た知識を使い回せるので、毎回ゼロから考える必要がなくなります。その結果、「導入数が増える」→「経験値が上がる」→「勘どころが良くなる」→「導入スピードが上がる」→「さらに導入数を増やせる」という良い循環が生まれるのです。
「10回に1回の成功」がとてつもない価値を生む
試す回数を重視すべきもう一つの理由は、10回試せば、そのうちの1つか2つは、驚くほどの効果を発揮することがあるからです。この「10回に1回のホームラン」がもたらすインパクトは、他の9回の失敗を補って余りあるほどの価値を会社にもたらします。
世の中で話題になるAIの成功事例は、ほとんどがこのような試行錯誤の末に生まれた「当たった」ケースです。100発100中を狙うのではなく、何度もバッターボックスに立つことが重要なのです。
AI時代の「覚悟」を問う
AI導入を成功させるには、テクニックだけでなく、経営としての「覚悟」が必要です。それは、AIを新人採用と同じように、未来への投資として捉える覚悟です。
AIも新人も、短期的なコスパでは測れない
会社が新入社員を採用するとき、短期的なコストパフォーマンスは考えません。会社の未来を担う人材を育てるための、絶対に欠かせない「未来への投資」だと考えているからです。AIの導入も、これと同じです。導入したAIがすぐに利益を生むとは限りません。
むしろ、最初は「教育コスト」がかかる、いわば「AIという新人」です。しかし、そのAIと付き合い、ノウハウを蓄積することこそが、将来の競争力を決める重要な投資活動なのです。
「道具」としてしか見ない会社に未来はない
AIとの付き合い方を確立できない会社が、これから間違いなく衰退していく。これは断言できます。なぜなら、AIは単に業務を効率化するだけでなく、ビジネスのルールそのものを変えてしまうからです。
かつてインターネットを「便利な道具」としか見なかった会社が、なぜ取り残されたのか。それは、ネット通販やSNSといった、インターネットを「世界観」として捉えた新しいビジネスモデルに市場を奪われたからです。彼らは、既存の業務が少し非効率になっただけではありません。ビジネスの土俵そのものを失ったのです。
AIも同じです。「AIと共に新しい価値を創る」というマインドセットを持たない企業は、いずれAIを前提として設計された新しい競合に、市場ごと破壊されるリスクに直面します。これは、効率化の問題ではなく、生存の問題なのです。
未来への投資として「試した回数」を追いかけよう

この記事では、AI導入に対する根本的な考え方の転換を提案しました。
AIを「業務効率化の道具」と見なす限り、その本質的な力を見誤り、小さな成功と大きな失望を繰り返すことになります。そうではなく、AIを「新しい世界観そのもの」として受け入れ、自社のビジネスを根底から見直す覚悟が必要です。
そのための最も確実な一歩が、KPIを「AI導入数」に設定し、「試した回数」を追いかけることです。それは、AIという新しいOSを、失敗という経験を通して組織にインストールしていくための方法です。
AIと共に働き、AIと共に新しい価値を創造する。その未来に向けた投資として、目先の成果に一喜一憂せず、粘り強く挑戦を続けていく。その地道な取り組みの先にこそ、本当の意味での変革と、会社が成長し続ける未来があると思います。
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