AIエージェントを組織内で複数扱う時代になると、対AIエージェントなのか、対人間なのかでテキストコミュニケーションの仕方の使い分けがどんどんとなくなっていきます。
もはや、AIエージェントへの指示出しの量の方が多くなり、コミュニケーション量でいうと、「AIエージェント > 人間」ということになると考えられます。
そんなときに、プロンプト式コミュニケーションの概念を身につけておくと非常にスムーズに、対AI、対人間、との仕事をすすめることができるでしょう。
プロンプトの概念を対人間に用いた高速コミュニケーション
AIへ与えるプロンプトの手法を人間同士のコミュニケーションに応用することで、明確でスピーディーな指示や意思疎通が可能になる、そんな新しいアプローチをご紹介します。
スタートアップの若き起業家や、大企業で次々と新しいチャレンジを主導しているビジネスリーダーのみなさま、日々多くの決断を迫られていることと思います。
時間は限られ、プロジェクトは複数走り、チームメンバーも多様。
そうした複雑な環境で求められるのは、「誰が何をどのようにすべきか」を一瞬で伝えることができるコミュニケーションテクニックです。
特にSlack、Chatwork、Teamsを中心としたチャットツールを使っている方も多いでしょうし、そこでの業務指示をうまくすることは、確かな行動力と効率性が生まれます。
プロンプト式コミュニケーションは、組織内での指示出しやコミュニケーションにおいて、AIプロンプトの設計手法を応用した新たなアプローチです。
指示を出す相手がAIか人間かによって使い分けをする必要がなくなる
将来的にはAIエージェントが飛躍的に発展し、人間とほぼ同等の水準で業務をこなせるようになると予想されます。
もしそうなれば、指示を出す相手がAIか人間かによって使い分けをする必要がなくなるでしょう。
わざわざ両者でコミュニケーション手法を変えるのは手間が増えるだけですし、指示や会話のテンプレートは少ないほうがスムーズです。
だからこそ、最初からAIにも人間にも通じるような、統一されたコミュニケーションのかたちを採用することが理にかなっているのです。結果として、AIへの指示出しがそのまま人間のチームメンバーへの指示出しとも共有でき、コミュニケーションの円滑化と業務効率の向上がよりいっそう期待できるようになるでしょう。
コミュニケーションエラーを防ぎたい
人間同士の仕事では、コミュニケーションエラーがよく発生します。
その大半は、「うまく伝わらなかった」「うまく理解できなかった」という認識齟齬によるものであることが大半です。
皆さんのこれまでの経験でも、「あの人の言っていることはよくわからない」「あの人にはうまく意図が伝わらない」ということで、苦い経験というものがあったのではないでしょうか。
AIに対してうまくプロンプトを作れる人は、「構造化されたロジカルな日本語の文章」を書くことができる人です。AIに対してプロンプトをうまく入力するテクニックと、チャット時代における人間に対するマネジメントは、実は似通っているのかもしれません。
コミュニケーションというのは、「関係者の意図がすり合い、目指す方向に向かってなんらかのポジティブな結果を生み出すもの」だと思います。
このAI時代のコミュニケーションとして、AIに対するコミュニケーションとして代表的な方法である「プロンプト」の概念を人間とのコミュニケーションに当てはめて、うまくコミュニケーションをするという、なんとも皮肉のような考え方ですが、これがとてもビジネスの現場で効果を発揮します。
これをプロンプト式コミュニケーションと名付けましたので、ご紹介していきます。
プロンプト式コミュニケーションとは、AIに対するプロンプトの設計方法を人間への指示やコミュニケーションに応用する考え方です。
プロンプト式コミュニケーションは、AIへの指示設計で培われた「端的さ」「期待する結果の明確化」「行動ステップの具体化」といったエッセンスを人間同士のやりとりにも取り入れることで、より効率的で誤解を生まない指示・意思疎通を実現しようというアプローチです。
具体的な内容を段階的に解説し、ノウハウも含めて説明します。
プロンプト式コミュニケーションの特徴:相手に期待するゴールを打ち出す
ゴールを伝える
いつものコミュニケーション、「このタスク、お願いね」で終わっていないでしょうか?
忙しいビジネスの現場では、タスクの丸投げは日常茶飯事かもしれませんが、それでは受け手が困るケースが多々あります。
プロンプト式コミュニケーションの重要な要素の一つが、「期待する結果を先に伝える」という点。
AIに対して「ターゲット顧客の特徴を3点挙げたうえで、最適なプロモーション施策を提案して」と言えば、AIはそのゴールに向かって情報を整理してくれます。
人間相手でもまったく同じです。
「この資料、見といて」ではなく、「来週のプレゼンに向けて、この資料の構成を分かりやすく整え、必要があればグラフを追加してほしい。社内の決裁がとりやすい状態に仕上げてくれると助かる」と具体的に期待値を示すのです。
なぜそれが必要かの背景を伝える
ゴールとともに大切なのが「なぜやるのか」という理由の共有です。
これがあると、受け手は全体像を掴みやすくなり、モチベーションが高まります。
AIにも「なぜこの情報が必要なのか」を明示すると、回答の精度がぐっと上がることがあります。
人間も同じく、「この資料は、将来の事業パートナーへの提案書になる。だからこそ、視覚的にインパクトがある仕上がりが必須なんだ」と背景を伝えることで、納得感と意欲が増すのです。
期待値を定量化する
曖昧な指示をしないために有効なのが、数値や具体的な指標です。
「“分かりやすい” ってどのレベル?」という疑問を解消するために、「次の社内報告会(15分間)で説明できるレベル」「目次は3章構成にする」「3つの提案パターンを用意する」など、ある程度の基準を示すだけで、受け手はぐっと動きやすくなります。
AIに「簡潔にまとめて」と入力するより、「300字以内で箇条書きを3項目入れてまとめて」と伝えた方が、はるかに望む出力を得やすいのと同じ理屈です。
プロンプト式コミュニケーションの特徴:ステップバイステップ
最初の一歩をはっきり示す
「とりあえずやってみて」では、受け手は困ります。
何から手をつけるべきか分からず、結局動き出すのが遅れるか、方向違いのアクションを取ってしまいがちです。
AIへのプロンプトでは「まず〇〇を分析して、次にその結果を〇〇に当てはめてください」と手順を分けて記述すると、出力の精度が高まります。
人間に対しても、「最初に、この書類をチェックして、疑問点を3つ挙げてほしい。その後、クライアントにメールで確認を取ってくれればOK」とステップを細かく示せば、スムーズに作業が進みます。
期日を明示する
行動計画には「いつまでに」が必須です。
なぜなら、期限がなければ、他のタスクと優先度の比較ができず、後回しにされる恐れが高いからです。
AIに対しても「〇月〇日までに完了させて」といった期限の概念をプログラム的に与えるケースが出てきています。
人間相手ではなおさら、「今週の金曜までに済ませよう」「来週火曜日の会議に間に合うようにしてほしい」といった具体的な期限設定が行動を後押しします。
「お手隙で〜〜〜」なんて言葉は間違っても使ってはいけません。
AIに対して「お手隙で〜〜〜」なんていうプロンプトを打った人はいるでしょうか?全世界で一人もいないのではないでしょうか。
仕事をするということは、その前にもその後ろにも他人の動きへの影響があるため、必ず期日があるはずなのです。それをしっかり伝えましょう。
想定外のケースにも備える
プロンプト式コミュニケーションにおける柔軟性とは、「もし途中で××があれば、そのときは連絡してほしい」と条件分岐をあらかじめ盛り込むことです。
AIの場合なら「もしそのデータがなければ、仮に他のデータで代用して提案してほしい」などの追加指示を前もって書き込む。
人間同士でも「相手がデータ提供を拒んだ場合は、過去の類似案件を参照して仮説を立ててみて」と、複数のシナリオに応じた指示を用意しておくと、想定外のケースでも混乱が少なくスムーズに対処できるようになります。
プロンプト式コミュニケーションの特徴:試行錯誤とフィードバック
璧を追い求めずに改善のサイクルを回す
プロンプト式コミュニケーションは、一度で完璧な結果を求めるものではありません。
AIにプロンプトを出して結果を得たら、さらに修正を加え、再度プロンプトを調整する。その繰り返しが理想的なアウトプットを生み出します。
人間の現場でも同様です。
「まずやってみて、結果を報告してくれたら、一緒にブラッシュアップしよう」というスタンスが大切です。
最初から100点を取りにいくのではなく、小さなPDCAサイクルを回していくほうが結果的に早く高品質にたどりつきます。
良し悪しのフィードバックをする
プロンプト式コミュニケーションを活かすには、指示を受けた側の行動に対して「合っているのか」「もう少し調整がいるのか」を逐一フィードバックする文化づくりが欠かせません。
AIに対しても「もっとこれを詳しく」「もう少し抽象化して」と追加プロンプトを与えますが、人間同士の場合は、フィードバックの伝え方ひとつでモチベーションが左右されます。
「ありがとう、こうしてくれたおかげでスムーズに進んだよ」というポジティブな言葉や、「ここはもう少しこうするともっと良くなると思う」といった建設的なアドバイスが大きな効果を発揮します。
(人間とのコミュニケーションの方が大変ですね)
反応は速く
ビジネスのスピードが増している現代、指示やフィードバックに時間をかけすぎると、流れが止まってしまいます。
AIならプロンプトを入れればすぐに応答が返ってきますが、人間同士ではなかなかそうはいかない場合もあるでしょう。
とはいえ、「あとで詳しく話しますね」で流してしまうと、その間にモチベーションや熱量が下がることも多いものです。
できる限り早くタイムリーにコミュニケーションを取ることで、プロジェクト全体のテンポが劇的に向上します。
プロンプト式コミュニケーションの特徴:形式的フォーマット
プロンプト式コミュニケーションのやり方は、形式的なフォーマットに当てはめることで実現できます。ここではさまざまな形式の例をお見せしますので、ぜひご自身でやりやすい形式を見出してみてください。
コロン形式
オペレーションリーダーの奥脇です。
現在、弊社のプロジェクト管理プロセスにおいて、いくつかの改善点が見受けられます。
そこで、以下の点について各自から改善提案をお願いしたいと思います。
改善依頼内容:
プロジェクトの進捗管理方法
現状: 手動での進捗報告が中心
改善提案: 自動化ツールの導入やダッシュボードの活用方法
チーム間のコミュニケーションフロー
現状: 各チーム間で情報共有が断片的
改善提案: 定期的なクロスファンクショナルミーティングの設定やコミュニケーションツールの見直し
リソースの最適配分
現状: プロジェクトごとのリソース配分が不均衡
改善提案: リソース管理ソフトウェアの活用やリソース配分基準の再設定
期待する成果:
提案は具体的かつ実行可能な内容でお願いします。
各提案に対する予想される効果やメリットを明記してください。
提出期限は4月10日(水)17:00までです。
提出方法:
提案書はWordまたはGoogle Docs形式で作成
ファイル名は「改善提案_名前.docx」または「改善提案_名前.pdf」
提出先: #オペレーション改善スレッドにアップロード
補足情報:
過去の改善事例や参考資料は共有済みですので、必要に応じて参照してください。
質問や追加情報が必要な場合は、このメッセージに返信するか、直接私にDMを送ってください。
皆さんの積極的な参加を期待しています。よろしくお願いします!
四角形式
■デザイン部門へのUI改善指示
デザインマネージャーの奥脇です。
AI-BPR CLOUDのUIに関して、以下の改善点を提案します。
各自の担当部分について、具体的な改善案を2/24までに提出してください。
■改善依頼内容
1.ダッシュボードのナビゲーション強化
- 現状の課題
- ユーザーが必要な機能に迅速にアクセスできない
- ナビゲーションメニューが複雑で、初心者にとって理解しにくい
- 改善提案
- ナビゲーションメニューの階層を整理し、主要機能をトップレベルに配置
- アイコンとテキストのバランスを見直し、視覚的に分かりやすくする
- ホバー時やクリック時のフィードバックを強化
2.フォーム入力のユーザビリティ向上
- 現状の課題
- フォームフィールドが多く、入力が煩雑
- エラーメッセージが分かりにくく、ユーザーが対処方法を理解しにくい
- 改善提案
- 不要なフィールドを削減し、入力項目を最小限に抑える
- インラインバリデーションを導入し、リアルタイムでフィードバックを提供
- エラーメッセージを具体的かつ親切な表現に変更
3.レスポンシブデザインの最適化
- 現状の課題
- モバイルデバイスでの表示が崩れる箇所がある
- タッチ操作時のインタラクションが不十分
- 改善提案
- 各デバイスサイズに応じたレイアウト調整
- ボタンやリンクのサイズをタッチ操作に適した大きさに変更
- メディアクエリを活用し、特定の画面サイズに最適化されたスタイルを適用
■期待する成果
- ユーザーの操作性が向上し、満足度が高まる
- サポートへの問い合わせが減少する
- アプリケーションの利用率が向上する
■提出方法
- 提案書はPDF形式で作成
- ファイル名は「UI改善提案_名前.pdf」とする
- 提出先: #デザイン改善提案スレッドにアップロード
■参考資料
- 現行デザインのスクリーンショットは#デザインリソースチャンネルに保存済み
- ユーザーテストのフィードバックレポートも参照してください
■追加指示
- 提案内容には、改善後のデザインモックアップを含めること
- 必要に応じて、デザインツール(Figma、Sketchなど)での共有も行ってください
- 質問や不明点があれば、私に直接メンションしてください
どうぞよろしくお願いいたします!
丸形式
◎デザイン部門へのUI改善指示
デザインマネージャーの奥脇です。
AI-BPR CLOUDのUIに関して、以下の改善点を提案します。
各自の担当部分について、具体的な改善案を2/24までに提出してください。
◎改善依頼内容
1.ダッシュボードのナビゲーション強化
- 現状の課題
- ユーザーが必要な機能に迅速にアクセスできない
- ナビゲーションメニューが複雑で、初心者にとって理解しにくい
- 改善提案
- ナビゲーションメニューの階層を整理し、主要機能をトップレベルに配置
- アイコンとテキストのバランスを見直し、視覚的に分かりやすくする
- ホバー時やクリック時のフィードバックを強化
2.フォーム入力のユーザビリティ向上
- 現状の課題
- フォームフィールドが多く、入力が煩雑
- エラーメッセージが分かりにくく、ユーザーが対処方法を理解しにくい
- 改善提案
- 不要なフィールドを削減し、入力項目を最小限に抑える
- インラインバリデーションを導入し、リアルタイムでフィードバックを提供
- エラーメッセージを具体的かつ親切な表現に変更
3.レスポンシブデザインの最適化
- 現状の課題
- モバイルデバイスでの表示が崩れる箇所がある
- タッチ操作時のインタラクションが不十分
- 改善提案
- 各デバイスサイズに応じたレイアウト調整
- ボタンやリンクのサイズをタッチ操作に適した大きさに変更
- メディアクエリを活用し、特定の画面サイズに最適化されたスタイルを適用
◎期待する成果
- ユーザーの操作性が向上し、満足度が高まる
- サポートへの問い合わせが減少する
- アプリケーションの利用率が向上する
◎提出方法
- 提案書はPDF形式で作成
- ファイル名は「UI改善提案_名前.pdf」とする
- 提出先: #デザイン改善提案スレッドにアップロード
◎参考資料
- 現行デザインのスクリーンショットは#デザインリソースチャンネルに保存済み
- ユーザーテストのフィードバックレポートも参照してください
◎追加指示
- 提案内容には、改善後のデザインモックアップを含めること
- 必要に応じて、デザインツール(Figma、Sketchなど)での共有も行ってください
- 質問や不明点があれば、私に直接メンションしてください
どうぞよろしくお願いいたします!
かっこ形式
<デザイン部門へのUI改善指示>
デザインマネージャーの奥脇です。
AI-BPR CLOUDのUIに関して、以下の改善点を提案します。
各自の担当部分について、具体的な改善案を2/24までに提出してください。
<改善依頼内容>
1.ダッシュボードのナビゲーション強化
- 現状の課題
- ユーザーが必要な機能に迅速にアクセスできない
- ナビゲーションメニューが複雑で、初心者にとって理解しにくい
- 改善提案
- ナビゲーションメニューの階層を整理し、主要機能をトップレベルに配置
- アイコンとテキストのバランスを見直し、視覚的に分かりやすくする
- ホバー時やクリック時のフィードバックを強化
2.フォーム入力のユーザビリティ向上
- 現状の課題
- フォームフィールドが多く、入力が煩雑
- エラーメッセージが分かりにくく、ユーザーが対処方法を理解しにくい
- 改善提案
- 不要なフィールドを削減し、入力項目を最小限に抑える
- インラインバリデーションを導入し、リアルタイムでフィードバックを提供
- エラーメッセージを具体的かつ親切な表現に変更
3.レスポンシブデザインの最適化
- 現状の課題
- モバイルデバイスでの表示が崩れる箇所がある
- タッチ操作時のインタラクションが不十分
- 改善提案
- 各デバイスサイズに応じたレイアウト調整
- ボタンやリンクのサイズをタッチ操作に適した大きさに変更
- メディアクエリを活用し、特定の画面サイズに最適化されたスタイルを適用
<期待する成果>
- ユーザーの操作性が向上し、満足度が高まる
- サポートへの問い合わせが減少する
- アプリケーションの利用率が向上する
<提出方法>
- 提案書はPDF形式で作成
- ファイル名は「UI改善提案_名前.pdf」とする
- 提出先: #デザイン改善提案スレッドにアップロード
<参考資料>
- 現行デザインのスクリーンショットは#デザインリソースチャンネルに保存済み
- ユーザーテストのフィードバックレポートも参照してください
<追加指示>
- 提案内容には、改善後のデザインモックアップを含めること
- 必要に応じて、デザインツール(Figma、Sketchなど)での共有も行ってください
- 質問や不明点があれば、私に直接メンションしてください
どうぞよろしくお願いいたします!
YAML形式
指示: 営業部門への新規リードフォロー指示
内容: リモートワーク中の営業チームで、新規リードに対するフォローアップを強化するための指示。
メッセージ:
先週獲得した新規リード(リードID: 20230401)について、以下のフォローアップをお願いします。
- リード詳細:
- 名前: 田中 太郎
- 会社名: 株式会社サンプル
- 連絡先: tanaka@example.com
- 期待するアクション:
1. 初回連絡
- 期限: 3月25日(金)まで
- 方法: メールでのご挨拶とサービス紹介
2. フォローアップミーティング設定
- 反応後2営業日以内に日程調整
- ツール: Zoom
- 背景:
- クライアントのデモ前に緊急対応が必要
- 質問があればSlackで連絡
このようにさまざまな形式がありますが、ご自身の使いやすい形式をみつけてプロンプト式コミュニケーションを磨いていきましょう。
プロンプト式コミュニケーションへのよくある反対意見
ここでは、プロンプト式コミュニケーションにまつわる代表的な反対意見を取り上げ、それぞれに対してどう対処すべきかを記述します。
「人間関係が機械的になりそう」という反対意見
反対意見の主張
?:一瞬で伝わる指示は魅力的だが、効率重視がすぎてチームのコミュニケーションから温かみがなくなりそう。
プロンプト式コミュニケーションで無駄なコミュニケーションは減るかもしれないが、その一方で「雑談やアイスブレイクのような人間らしいやり取りが削ぎ落とされてしまうのでは?」と心配する声があります。
特に、リモートワークや在宅勤務が増える中で、さらに事務的なやり取りばかりになると、チームの結束やメンバー同士の絆が弱まるのではないかという不安があるという反対意見だというのです。
?:人はロボットではないので、感情的な要素や雑談が大事なのに、それが排除される危険性は?
わざわざプロンプト式で事細かく指示を整理するあまり、「やりとりが機械的・マニュアル的になり、人間らしいゆとりや感情表現が失われそうだ」という反対の声です。
コミュニケーションの温度感や表情の変化、微妙なニュアンスが失われると、チームメンバーのモチベーションや相互理解に悪影響が及ぶのでは、と懸念されます。
反対意見への回答
◎あくまで指示やタスク管理の効率化が目的。雑談や感情表現を排除するわけではない
プロンプト式コミュニケーションは、「業務上の指示」をクリアにする手段であり、私的な雑談やチームビルディングを否定するものではありません。
むしろ、業務指示にかかるやり取りがコンパクトになることで、空いた時間をより人間的な交流や雑談に割り当てられるようになる可能性が高まります。
「どこまでが業務コミュニケーションで、どこからが雑談なのか」をはっきり区別すると、チームメンバーも無意識に気疲れすることが減り、雑談をするときは思いきりリラックスできる、という良い効果が期待できます。
◎曖昧な指示はかえって衝突や誤解を生む
人間関係をギスギスさせる大きな要因は、「言った言わない」「認識がずれていた」などの誤解やすれ違いです。あいまいなコミュニケーションは、感情を通じ合うきっかけになる場合もありますが、同時に「意図が伝わっていなかった」と後で気づくリスクを増大させます。
指示を明確化しておけば、無用なトラブルが減り、結果的にメンバー同士が余計なストレスを抱えなくなるのです。
そうなれば、気持ちに余裕が生まれ、互いをリスペクトしながら雑談やアイデア交換を楽しむ時間が増えるはずです。
◎むしろ“コミュニケーションの質”を向上させる補完的な役割
プロンプト式の指示であれば、短時間で作業概要や目的を理解しやすいので、チームメンバー同士で「業務の方向性」に関する議論を重ねる必要が減ります。
その分、より本質的な話題(指示のWHYの部分の共有や新しいアイデアのディスカッション)にフォーカスできるでしょう。
指示出しをスマートに済ませることで、チームメンバーは「この上司や同僚は、要点を整理して伝えてくれるから仕事がやりやすい」と感じ、心理的安全性も高まります。
結果的に人間関係のスムーズさが増し、“温かみ”と感じられる場面もむしろ増えるかもしれません。
形式ばかりで柔軟性を欠くのでは?」という反対意見
反対意見の主張
?:指示が明確すぎると、メンバーの創造性や自発性が損なわれるのではないか
たとえば、「この企画を完成させるための手順は○○、期限は○月○日、必要な提出物は△△」と細かく指定された場合、現場のメンバーが自分の考えや発想を取り入れる余地が少なくなるのでは、という懸念があります。
イノベーションや独自性の求められる仕事ほど、形式的な指示が多いと「既定の枠内で作業を進めるだけ」になってしまう可能性があるというのです。
?:すべて手順通りにやろうとするあまり、イレギュラーな状況に弱くなるのでは
ビジネスの現場では、想定外の出来事や変更が日常茶飯事です。
プロンプト式コミュニケーションによって「こういうときはこうする」というルールが明確になる反面、固定化されたルールに縛られすぎると、即座の臨機応変な対応や“とっさの判断”ができなくなるのではないか、という指摘です。
実際、各メンバーが「指示と違う動きをしたら叱責されるのでは?」と構えすぎてしまうと、結果としてチャンスを逃したり、新しい可能性に気づけなかったりする恐れもあるといいます。
反対意見への回答
◎明確な枠組みがあるからこそ、コアとなる部分に集中できる
曖昧な指示のほうが、実は作業者を余計に混乱させたり、クリエイティブな思考を阻害したりするケースが多いです。
たとえば、「自由にやっていいから」と言われると、そもそもの目的や期待値が見えず、作業者はどの方向性が適切か悩みがちになります。
一定の枠が明確に示されていれば、無駄な迷いを減らし、「ここは自由に工夫できる余地がある」「ここは必ず守らないといけないポイントだ」というラインが認識しやすくなります。
結果として、より重要な“クリエイティブな要素”にこそ集中でき、質の高いアウトプットを生み出せるようになります。
曖昧な指示のほうが、実は作業者を余計に混乱させたり、クリエイティブな思考を阻害したりするケースが多いです。
たとえば、「自由にやっていいから」と言われると、そもそもの目的や期待値が見えず、作業者はどの方向性が適切か悩みがちになります。
◎条件分岐や「もしも」を事前に設定しやすい
プロンプト式コミュニケーションは「予想外の事態が起こったら、そのときはこうしてほしい」といった条件分岐を最初から織り込むことが可能です。
これはむしろ、単に「あとはよろしく」という丸投げ的な指示よりもずっと柔軟で、状況変化に強い仕組みといえます。
事前に「想定外の状況」がどのようなものかを共有しておくことで、メンバーは不測の事態に対応しやすくなり、結果としてチーム全体のレジリエンス(回復力・柔軟性)が高まります。
単にルールを盲目的に守るのではなく、あらかじめ想定パターンを示しているからこそ、実際の運用時にはよりスムーズにアドリブ対応ができるのです。
◎柔軟性は“指示を更新する”ことで確保できる
プロンプト式コミュニケーションは、一度決めたプロンプト(指示)を状況に合わせて書き換える(アップデートする)ことを前提としています。
AIへのプロンプトでも、最初の指示で完璧を目指すより、結果を見て微調整しながらベストな回答に近づけていくほうが効率的ですよね。
同様に、チームメンバーに対しても「途中で状況が変わったら、遠慮せず相談してほしい」「変更が必要だと感じたら、すぐに教えて」とプロンプト自体を改訂できる仕組みを作っておけば、手順にしばられるばかりの硬直化は回避できます。
「クリエイティブな業務には不向き」という意見
反対意見の主張
?:アートやデザイン、研究開発など、曖昧さや未知が多い場面ではかえって邪魔になるのでは。
たとえば、デザイナーやエンジニアなどが「この部分は、いろいろ試してみて新しい解決策を探るプロセスが楽しいのに、最初から細部まで指示されていたら意欲が下がってしまう」という声があります。
また、イノベーションを求めるとき、最初は問題や目標が漠然としていることも多いため、明確なフレームワークを設けると「自由な発想」が湧きにくくなると感じる人もいるといいます。
?:すべてが言語化できるわけではなく、直感的なひらめきが必要な領域もある。
特に芸術や学術研究のようなジャンルでは、「頭の中でイメージが交錯して、新たなアイデアが生まれる」といったプロセスが重要です。プロンプト式コミュニケーションでバチッと方向性を固定してしまうと、その“創造の余地”を狭めるのではないか、という懸念をいわれたりします。
反対意見への回答
◎最小限の指針を与えたほうがイノベーションは進む
完全に自由と言われると、かえって何から手をつければいいのか迷ってしまう人は多いものです。
逆に、「今回はサブスクモデルを活用したい」「このターゲット層の課題を解決したい」という最低限のテーマや条件が定義されているほうが、そこから具体的なアイデアを創発しやすくなります。
AIに対するプロンプトでも、何も書かずに「おすすめを出して」と言うより、「20代女性向けの製品で、サブスクを取り入れたビジネスプランを提案して」と指示したほうが、はるかに的確で豊富なアイデアが得られるのと同じです。
◎指示を細かくしすぎる必要はない
プロンプト式コミュニケーションとは、「状況に応じてプロンプトを柔軟に書き換える」ことが本質です。
したがって、必ずしも「すべてを細かく指定する」わけではなく、「ここは自由に考えてほしい」「ゴールだけ定めて、あとは各自で工夫して」といったレベルのプロンプト式コミュニケーションも可能です。
クリエイティブな領域ほど、大まかなゴールやテーマだけを示し、細部はプロセスの中で段階的に発展させるやり方が合っています。
重要なのは、どの部分を明確化し、どの部分を曖昧に残すかのバランスを見極めることです。
◎“ガイドレール”として機能させることで、クリエイターの負担を減らす
デザイナーやアーティストなど、自由度の高い仕事をする人ほど、最初の入り口で「目的が曖昧」だと非常に苦労することも多いものです。
クライアントや上司が思い描くイメージが共有されないまま作業すると、成果物を出した後で「そうじゃないんだよね」と言われ、すべてやり直しになる事例も珍しくありません。
プロンプト式で最低限の要求やコンセプトが明確になっていれば、あとは制作側が安心して「ではこの条件下で最大限に面白いものを作ろう」と取り組めるため、余計な摩擦が減り、結果的にクリエイティビティを存分に発揮しやすくなります。
「短期的な効率重視で長期的な関係を損なう」との指摘
反対意見の主張
?:すぐに分かりやすい指示を出す手法は、一見効率がいいが、深い対話やじっくりした関係構築が犠牲になるのでは?
ビジネスにおいては、短期的な成果のみならず、メンバー同士の長期的な信頼や理解が欠かせません。
しかし、プロンプト式コミュニケーションがメインになると、密なコミュニケーションが減り、互いに淡々とタスクをこなすだけの関係になってしまうのではと懸念されたりします。
?:「業務指示」に特化しすぎて、チームが形だけの連携になってしまう危険は?
チームが表面的にはうまくまわっているようで、実際にはそれぞれが指示をこなすだけになり、結束力やチームとしての一体感が失われる恐れがあるという指摘です。
具体的には、「業務外のことを話す必要がなくなった」「雑談がなくなった」などの変化を懸念されるかもしれません。
反対意見への回答
◎時間とエネルギーを本質的な対話に回せる
業務指示が明確になれば、そもそも「これってどうすればいいの?」という無駄な質問や確認のラリーが激減します。
そのぶんメンバー同士が集まる場では、より深いテーマ、たとえばビジョンの共有やキャリアパスの相談などにフォーカスできるはずです。
逆に、指示があいまいなチームだと、ひたすら「次のタスクどうしましょう?」「これ、いつまでにやるべきですか?」というやり取りに時間を奪われます。結果的に「チームビルディング」や「アイデア創発」に割ける時間が少なくなるのです。
◎明文化は相互理解を高める手段でもある
指示や目的を言葉で明確に表現するとき、発信側と受け手側は「ゴールは何か」「成功とは何か」「なぜそれが必要か」という基本的な価値観をすり合わせる必要があります。
このプロセス自体が、実は長期的な信頼関係を築くうえでとても重要です。
「この指示はこういう意図なんだ」「ここまで具体化できると、この人はこういう観点を大事にしてるんだな」と互いに理解を深めることで、単なる作業指示のやり取りを超えた“共感”や“尊重”が生まれる可能性があります。
◎形だけの連携ではなく、透明性を伴ったチームワークを築きやすい
プロンプト式コミュニケーションでは、誰が何をすべきかがオープンに共有されやすいです。
それによって、自分が何を期待されているのか、他のメンバーとどこで協力すればいいのかが見えやすくなる。これは、裏方で頑張っている人の仕事が見えない、というような不満を減らす効果も期待できます。
チームとしての一体感は、必ずしも「雑談が多いこと」だけで生まれるわけではありません。
各自が役割を理解し、結果を出しつつも、お互いを尊重し合う関係が長く続くことで育まれるものです。
プロンプト式が「形だけの連携」を強いるどころか、むしろ裏表のない連携を促進する側面もあるといえます。
「社内全員が同じレベルで運用できるのか?」という懸念
反対意見の主張
?:部署や個人によってスキルや理解度が違う。プロンプト式のルールを全員がきちんと守れるとは限らないし、かえって混乱するのでは?
どの会社にも、ITリテラシーが高い人や低い人、管理職層や現場担当者などさまざまなバックグラウンドのメンバーがいます。
いきなりプロンプト式コミュニケーションを導入して「こうしましょう」と言っても、自然と適応できる人もいれば、戸惑う人もいるのではないか、という懸念です。
?:専門用語やテクニカルな手法ばかり強調されると、非エンジニア層や新卒社員はついていけないのでは?
「プロンプト」という言葉自体が一般的でないケースもあり、「AI開発やIT専門のチームはいいけど、総務や人事部門などにも同じことを求めるのは酷だ」と感じる人もいるかもしれないという反対意見です。
社内で共通のリテラシーが醸成されるまで、一定のハードルがあるのではという指摘です。
反対意見への回答
◎段階的な導入で徐々に慣らせる
いきなり全社一斉に「プロンプト式に切り替えます!」と号令をかけると、確かに抵抗や混乱が生まれやすいです。
まずは意欲の高いチームや、導入によるメリットが大きい部署からトライアルを実施し、成功事例を積み上げるのが現実的なアプローチです。
成功事例が可視化されると、「思ったより難しくなかった」「やってみると業務がスムーズになった」というポジティブな口コミが広がり、他の部署にも自然に浸透していくことが期待できます。
◎「難しい」というより「シンプルに明確化する」手法
プロンプト式コミュニケーションは、基本的には「誰が、いつまでに、何を、なぜ行うか」を短い文章にまとめるだけです。
これは、実は非常にシンプルな概念であり、複雑な専門知識や高いスキルを必須とするわけではありません。
新卒社員であっても、5W1Hの視点で指示出しを考えられるようになるだけで、格段にコミュニケーション効率が向上します。
また、テクニカルな手法を多用せずとも「プロンプト思考」のエッセンスを取り入れることで、社内の連携がスムーズになる可能性が大いにあるのです。
◎研修やガイドラインでサポートすれば習得は容易
少し慣れが必要な部分があるのも事実ですが、だからこそ社内研修やマニュアルの整備が効果的です。
具体的なフォーマットやテンプレートを提供し、「指示出し時のひな型」を示すだけでも、多くの社員がすぐに使いこなしやすくなります。
これまでメールやチャットでやっていた指示に、少し意識を加えるだけで「プロンプト式」に近い形が実現できることを強調すれば、抵抗感はぐっと下がります。
徐々に全社的に使われるようになれば、自然と共通言語が生まれ、組織全体の生産性向上にもつながるでしょう。
以上が代表的な反対意見と、それぞれに対するよりボリュームアップした反論・ポイント解説です。
これらを参考にしながら、組織にあった形でプロンプト式コミュニケーションを導入してみてください。
実際には、反対意見の背後にある心理的・文化的な要素にも配慮しつつ、小さな実験や段階的な導入を通じて成功事例を積み重ねていくのがおすすめです。
結果として、明確化された指示による業務効率の向上と、より豊かな対話や発想の交換という“いいとこ取り”が可能になるはずです。
まとめ
プロンプト式コミュニケーションは、リモートワークをはじめとする多様な働き方において、人と人との指示や情報共有をより的確かつ効率的に行うための有力な手法です。
ポイントは、①目的や期待される成果を先に提示する、②具体的なアクションステップを明確にする、③曖昧さを排除して伝わりやすくする。
この三つに尽きます。
構造的に文章をまとめるからこそ、受け手も迷わず動くことができ、時間や労力の無駄を大きく減らせるのです。
そして一度この手法に慣れれば、指示のやりとりだけでなく、チームの連携や社内文化そのものがスピードアップし、より高い生産性と創造性を実現できるようになります。
プロンプト式コミュニケーションは、すぐに取り入れられる小さな工夫でありながら、組織全体を動かす大きな変化を生む可能性を秘めています。
ぜひ本記事の事例を参考に、明日からのコミュニケーションのアップデートをしてみてください。
仕事のスピードと質が、驚くほど向上するはずです。
コーレができること
コーレでは、AI時代に適した組織開発・人材開発コンサルティングなども行なっています。
お客様の課題や規模や状況にあわせて幅広く柔軟に対応しています。
ぜひ、組織内のコミュニケーション手法のアップデートの際には、一度コーレにご相談ください。
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